様々な分野で活躍する「天才」と呼ばれる子どもたち。彼らが「天才」であるひみつを、まなびwithが開発した『思考の達人ツール』を用いながら紐解いていきます。
※2021年3月でまなびwithはサービスを終了いたしました。2021年4月から、「思考の達人ツール」は小学生向け通信教育「名探偵コナンゼミ」にて展開しています。
今回取材をさせてもらったのは、5歳で大道芸人としてステージデビューを果たし、現在も活躍中の女羽(こはね)さん。同じく大道芸人であるお父さん・パクパクりゅうじさんとともに、親子で大道芸の公演をしています。
※取材時点(2019年3月)では中学3年生。
目次
自分は大道芸人として、仕事をしているんだ。
女羽さんが大道芸を始めたのは、3歳のとき。ご自身では記憶がないくらい小さい頃の出来事ですが、お父さんのりゅうじさんは、女羽さんの姿に期待をしたんだそうです。
「私のバルーンアートの道具を使って、女羽がひとりで遊んでいる姿を見てすぐに『いいぞ!』と。小さい子が大道芸をできると話題性もあり、人気がでるので、一緒に公演することのメリットも大きかったです。一方で、子どものマネジメントは大変でした。練習を嫌がったり、本番でも体調を崩すとか機嫌が悪くなるとか。そのあたりのコントロールを意識する必要がありました」
女羽さん自身が、大道芸の楽しさをハッキリ感じ始めたのは6歳くらい。幼稚園の卒園式でみんなの前で公演を行い、「すごい!」とたくさんの声をかけてもらううちに、大道芸を楽しいと思うようになりました。
「公演も多かったですし、メディアに取り上げてもらう機会も徐々に増えていきました。テレビ番組に出演して、誰もが知っているような著名人の方に驚いてもらえるのも純粋に嬉しかったです。ショッピングセンターのイベントスペースなどでの公演もするのですが、そこでは施設のバックヤードで準備をしたり、打ち合わせをすることもあります。普段、自分がお客さんとして行かないところに入る経験が増えてくると、『自分は大道芸人として仕事をしているんだ』って気持ちもだんだん生まれてきたように思います」
難しいことは、小さく分解!ステップチャートを使って、練習の工程を考えよう。
小さい頃から大道芸人として活躍してきた女羽さん。公演で技を披露するのは楽しい。お客さんから褒めてもらえるのも楽しい。でも、じつは練習があんまり好きではないと言います。
「大道芸の技は、自転車に乗るような感覚。一度できるようになったら、公演の前に調整すればできてしまうので問題はないんです。ただ、大変なのは新しい技を覚えるとき。練習そのものが好きじゃない、という気持ちがあって、何からやればいいかも思いつかず……(笑)。なので幼い頃は、お父さんに練習の工程表をつくってもらい、それに沿って練習をすることが多かったです」
お父さんのつくる工程表とは、技ができるようになるまでの練習の仕方を細かく定めたもの。今日はこの動きを50回できるようにする、明日は同じ動きを100回、それができたら次の動きを50回……、とやり進めていくものです。
ここで、具体的に新しい技を練習するにはどんな考え方で進めているのか。思考の達人ツールの中の、ステップチャートを使いながら、りゅうじさん・女羽さん親子のチャレンジのコツを教えてもらいました。
今回使用するステップチャートは、順序立てを行うためのツール。「クラブパッシング」という、6本のクラブをふたりで渡し合う技ができるようになるまでの過程を教えてもらいます。
クラブパッシングはふたりで息を合わせて行う技ですが、最初はひとりの練習。いきなりクラブをもつのではなく、最初はボールで練習します。ボール3つをお手玉のように投げ続け、それができるようになったらクラブ3本を投げられるように。これをひとりで、1000回。手元を見なくてもできるようになるまで繰り返します。
ひとりでクラブを投げられるようになったら、ようやくふたり。おとうさんと女羽さん、対面での練習開始です。しかし、最初はクラブ1本をふたりで投げ合う練習から。1本をきれいに投げるだけでも、結構難しいんだそうです。1本ができたら、2本。次は3本。少しずつ増やして、6本を投げあえるようになるまで練習します。
6本投げられるようになったら、次はステージ上で披露することを意識する。ステージでは何回続けるのか、どんなふうに見せたいのかを打ち合わせ、回数を重ねていきます。よりタイミングを合わせて、お互いがやりやすいことも考えて。「見られる」ことも意識するためにビデオ撮影を行い、客席から見てクオリティの高い演技に高めていけたら完成!
おふたりの練習方法のポイントは、とにかく課題を分解するということ。大技にいきなり挑戦しても難しいし、できなければ練習はますます苦手になる。小さい目標をたくさん設定し日々クリアしていけば、着実に力も尽くし、達成感を味わいながら練習に取り組めるのかもしません。勉強やスポーツにも応用することができそうですね。
大道芸人と建築家の共通点とは?
ベン図で「なりたい」の軸を見つける
この春から高校生になる女羽さん。大道芸人として、親子での公演だけでなくひとりでステージに立つ目標を聞かせてくれつつ。彼女には、もうひとつ大きな夢があることも教えてくれました。
「大道芸も続けていきますが、建築家になりたいという新たな夢も最近考えるようになりました。様々な家をリフォームして、家の課題を解決するテレビ番組を見たことがきっかけです。つくりたいのは、住む人に合った家。たとえばお年寄りの方がいるとか、赤ちゃんがいるとか、どんな人が住むかで家のつくりかたって本当は全然変わりますよね。それぞれの家族に合った家をつくれる建築家になりたいです」
大道芸人としても、建築家としても、活躍していきたい。夢がたくさんあるのはとても素敵なことです。一見、大道芸と建築の仕事はまったく異なる世界のことのように思えますが、なぜ両方をやってみたいのでしょう?
それぞれにどんな違いがあるのか、あるいは意外な共通点もあるのか。思考ツールのベン図を使って、考えていきます。ベン図は、共通点を探したり、違いを比較したりするためのもの。大道芸の仕事の特徴と、建築の仕事の特徴を挙げながら、考えていきます。
「大道芸は自分を見てもらうけど、建築は建てたものを見てもらうよね」「でも、両方誰かに喜んでもらいたいもの」。お父さんも一緒にサポートしながら、思いついたことをどんどん図の中に書き込んでいきます。
人に喜んでもらえることだったり、技術勝負だったり。あるいは、創造力を要されるものだったり。全然違う職業に見えて、共通点はたくさんあります。そしてわかるのは、女羽さんがそういったものに惹かれる価値観をもっているということ。もしかしたらこの共通点を軸に、これからもっとやりたいことの可能性が広がることもあるのかもしれません。
難しいことも整理すれば、
次の行動につなげられる。
「あらためて自分のやっていることを言語化できるかわからないので…」と、最初はちょっと不安そうに話し始めてくれた女羽さんですが、思考の達人ツールを使い始めると、どんどん意見を出してくれました。お父さんが隣で、「いやもっとこうじゃない?」「じゃあその反対の視点からも考えられるね」と積極的に誘導してくれたのも、女羽さんにとってはやりやすかった理由のひとつかも。「自分の考えを整理することができるので、高校受験の面接などにも役に立ちそうです」と聞かせてくれました。
「天才」と呼ばれる子どもたちも、ただ最初から才能があったからというだけで活躍をしているわけではありません。子どもたちがどんなことを考えているのか、どうしてそれをやりたいのか、それをやるには何を大事にして行動すればいいのか。大事なのは、言語化して整理してみることです。やってみるためのひとつのヒントとして、思考の達人ツールもお役にたてますように。本記事で紹介しているふたつのチャート以外にも、様々なツールを使うことができます。
※2021年3月でまなびwithはサービスを終了いたしました。2021年4月から、「思考の達人ツール」は小学生向け通信教育「名探偵コナンゼミ」にて展開しています。