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なんでもかんでも「やばい」でOK?
「あやしい」「びっくりした」「おもしろい」「たのしい」「おいしい」「感動した」…。これらすべての意味で使用されている言葉、違和感なくすぐにピンときた方、やばいです。
そう、正解は「やばい」という形容詞。本来の意味は以下のとおりです。
やば・い≪形容動詞「やば」の形容詞化≫
危険や不都合な状況が予測されるさま。あぶない。
(小学館『大辞泉』より)
さて、タイトルに掲げるように、この非常に多様な表現をすべて「やばい」で括ってしてしまうことについて、みなさんはどうお考えでしょうか。
やばいで表現したことのある状況や感情は?
下記は、小学生のお子さんを持つ保護者224名を対象とした、「やばい」の用法をテーマとした言葉の使い方についてのインターネット調査結果です。
(調査実施:小学館集英社プロダクション/期間:2018年2月28日~3月1日)
(↑回答が多かったもの上位8項目)
「やばい」という言葉が日常的に頻繁に使われている実感をお持ちの方も多いと思いますが、調査結果からは「やばい」の表す意味が非常に多岐にわたることが改めて証明されたかたちになりました。
さまざまな意味で乱発される「やばい」という表現は、いろいろなシチュエーションにおいて、まるで感嘆符「!」のように、そのときの瞬間的な危機感を煽る、非常に効果的な表現にも感じます。
ただ、言葉は日常的に使って自分のものにしていくもの。だとすると、「やばい」によって置き換えられた言葉たちはその人の中で風化していき、語彙力の低下につながるのではないでしょうか。
あなた自身の語彙力に自身はありますか?
調査ではさらに、自身の語彙力について自信があるかどうかという質問を行いました。
結果、「ある」「ややある」の合計は26.8%。「どちらともいえない」「あまりない」「まったくない」の合計は73.2%となりました。自信があるとまでは言い切れない方が大半ということがわかりました。
語彙力は「表現力」「読解力」「理解力」の土壌。
また、語彙力が役に立つのはどのような場面かを聞いたところ、1位になったのは「自分の考えや気持ちを表現するとき」。「表現力」と「語彙力」は、切っても切れない関係にあると言えます。この「表現力」は、2020年以降の学習指導要領でも重要とされてます。
次いで「人の話や文章を理解するとき」。こちらは、「読解力」や「理解力」とも言い換えられそうです。いくら理解しようとしても、そもそも使われている言葉の意味がわからなくては元も子もないですよね。
そして3位は「わからない人に向けて物事を説明するとき」。わからない人に向けて説明をする際には、自分が理解したことを整理し、噛み砕いて説明するために相手に合わせて言葉を選ぶことも必要になってきます。わかりやすく説明するためには、「理解力」、「表現力」がともに重要というわけです。
上記の「表現力」・「読解力」・「理解力」を育てるための土壌がまさしく「語彙力」であり、お子さんの国語学習においては、これを強化するための学習が大切だと言えるでしょう。
語彙力をつけるのに必要な、インプット/アウトプット
さらに、「お子さんに語彙力をつけてほしいと思いますか?」という質問では「思う」「やや思う」と答えた人の合計が8割を超える結果となりました。それでは、実際に語彙力をつけるためにはどうしたらよいのでしょうか。下記にいくつか例を挙げていきます。
本や新聞などいろいろな文章を読む
わからない言葉があったら、すぐに辞書で調べる習慣をつける
親子の会話を増やす
新しく覚えた言葉を会話のなかで積極的に使う
しりとりやなぞなぞ、かるたなどの言葉を使ったゲームで遊ぶ
「本を読む」「わからない言葉はすぐに調べる」「親子でたくさんおしゃべりする」など、ふだんの生活の中でできる工夫をしていくことが、親にとってもお子さんにとっても、語彙力アップ・表現力アップに繋がっていくと言えそうです。
まとめ
言葉は、時代とともに移り変わっていくもの。本来もっていた意味からあらわす内容が広範囲になっていったり、そもそもは無かった意味をもつようになったり、ということは、しばしばあることです。
そして今回の調査で取り上げた「やばい」のように、本来の意味から離れていたとしても、その言葉がふだんの生活に浸透していくにしたがって、抵抗感なく受け入れられていく例も少なくないようです。
ただし、「やばい」だけでは表現しきれないようなさまざまな感情や状況をひとまとめにして一つの言葉で片付けていると、しだいに新しい言葉を獲得していく機会は減り、語彙力も乏しくなり、表現力、理解力、読解力の低下に繋がってしまいます。
ぜひ、家庭や学校など普段の習慣のなかで語彙力を増やすことを意識していきたいですね。
調査データ元:小学館集英社プロダクション