たとえば、ビジネス、スポーツ、芸術。その他様々な分野に「天才」と呼ばれるくらい、活躍している子どもたちがいます。彼らは子どもならではの視点で、あるいは、子どもだということも関係なく大人以上に、素晴らしい活躍を見せてくれる人たちばかりです。
ではそんな「天才キッズ」たちが成功しているのは、なぜなのでしょう。才能に恵まれたから?特別な子どもたちだから? 本当にそれだけでしょうか。
たまたま彼らが天才だったから上手くいっているわけではなく、彼らが一生懸命に自分で考えて、行動して、やりたいことを実現させてきた秘訣がきっとあるはずです。「天才」たちの考え方を、小学館の通信教育まなびwithが開発した、「思考の達人ツール」を用いて紐解いていきます。
※2021年3月でまなびwithはサービスを終了いたしました。2021年4月から、「思考の達人ツール」は小学生向け通信教育「名探偵コナンゼミ」にて展開しています。
目次
「大人になってからね」って
諦めなきゃいけないのは、変だと思った
お話を聞かせてくれたのは、株式会社クリスタルロードの取締役社長である加藤路瑛(かとうじえい)さん。「親子起業」という形で、2018年12月にクリスタルロードを設立。中学生社長として活躍しています。
加藤さんの起業のきっかけとなったのは、ひとつのカードゲームでした。その名も『ケミストリー・クエスト』。理科の授業が好きだった加藤さんのために、お母さんが買ってきてくれたゲームです。しかしそのゲームでは、彼はほとんど遊ばないままでした。「買ってくれた母には悪いのですが、ゲームそのものよりも、そのゲームをつくった人の方が気になってしまったんですよね」と加藤さんは振り返ります。
「このゲーム、考えたのが小学生なんです。彼はこのゲームを商品化・事業化して、小学生で会社を設立しているんですよね。世の中には、そんな人がいるんだって、驚くとともに、自分もやってみようと思って。すぐに心が決まったから、母に相談し、次の日には学校の先生に『僕は会社をつくって社長になります』と伝えに行きました」
最初は、小学生で起業した人に刺激を受けて。しかし、すぐに行動を起こした背景には、加藤さんが幼い頃から感じてきた疑問が大きな力になりました。
「小さいころから、ものをつくるのが好きで、ダンボールでロボットをつくって遊んだりしていました。そのとき、『僕はロボットをつくる仕事がしたい』と言うと、決まって親や先生は言うんです。『大人になったらね』って。でもそれって変じゃないですか。大人じゃなきゃ仕事しちゃいけないなんてこと、本当はないはず。今やりたいと思ったことを諦めなくていい方法があるはず。ずっと考えてきたことの答えが、起業だったんですよね。そこにたどり着いてからの行動は、とても早かったと思います」
中学生にしかできないこともある。
だから、いまやることを諦めない。
起業を決めたのは、2018年の6月。その後夏休みに入ると、加藤さんは起業の準備を一気に進めました。起業のアドバイスをしてくれる人に相談しに行ったり、ビジネスコンテストに応募したり。「不安とか感じる暇もないくらい、とにかくやれることはすぐやりました」という加藤さん。協力してくれる大人とたくさん出会い、自分の本気を伝え、サポートしてもらいました。
ミッションは「子どもたちが自分の可能性に希望を持てる社会を作る」こと。そして「年齢や大人の固定観念で子どものチャンスをつぶさせない」こと。資金はクラウドファンディングで集め、2018年12月には会社設立に至っています。
「子どもたちには『自分もできる』『やってみたい』と感じてもらいたくて、『TANQ-JOB』というメディアをつくりました。世の中にある仕事を紹介したり、チャレンジしている人を紹介したりして、自分の可能性を発見してもらいたいと思っています。やりたいことがあっても、自分の力だけでは難しいという人に向けては、起業相談のサービスも行っています。実際に自分が起業した経験を生かし、アドバイスなどをします」
加藤さんがやりたいのは、たんに起業する子どもを増やすことだけではありません。子どもだからできない。子どもだからまだダメ。そんな固定観念そのものを壊していくことです。そして実際に、子どももできるための方法をつくっていくことです。
「中学生らしくしていろとか、意識高い系だねとか、インターネット上で批判を受けたこともあります。そういうときは本当に辛いけれど僕はいまの仕事をやりたいし、中学生にしかできないこともあるはずだから、それをいまの僕がやることにはとても意味があると思っています。起業が特別なことではなく、誰もができるようになればいいと思うし、みんなが『いまやりたい』と思うことを、いま叶えられる社会にしていきたいです」
使ってみよう、思考の達人ツール!
ピラミッドチャートで、起業の秘訣を紐解く
そんな加藤さんの頭の中を、さらに知っていきたい。今回はまなびwithの思考の達人ツールの中から、2種類のツールを加藤さんに使ってもらい、思考を整理していきます。
構造化して考える「ピラミッドチャート」と、
順序立てをする「ステップチャート」を使っていきます。
まずは、ピラミッドチャートから。誰もが起業するための秘訣を、このチャートを使って考えていきます。
ピラミッドの頂点に置くのは、「誰もが起業できるようになる方法」。このために、加藤さん自身がどんなことを実際にやってきたか、具体例をできるだけたくさんあげてもらいました。加藤さんは当時の行動を逐一ブログにアップしていたので、ブログを見ながら振り返ってもらいます。
起業したいと思って、最初はお母さんに言った。会社の場所探し。会社のサイトをつくって、SNSも始めて。ビジコンにも参加したし、クラウドファンディングもして…。起業する際に誰もが必要とすることもあれば、中学生だからこその困難があり工夫したこともあります。
次に行うのは、加藤さんのやった行動を抽象化していくこと。他の人も真似できるようなコツ・ヒントにしていきます。
お母さんに言う、学校の先生に言う、探究学舎(興味関心を育てることを目的とした子ども向けの塾)の方に言う、などは、「他の人にやりたいことを話す」に抽象化してみる。経営者交流会に行く、起業家メンタリングなどは「情報収集をする」、会社HPをつくる、SNSアカウント開設などは「行動に移す」。ピラミッドチャートの中段に記入します。
加藤さんが目指しているのは、誰もが起業できること。特別なやり方じゃなく、天才じゃなきゃできないことじゃなく。みんなができて、みんなにわかる言葉にしていきました。
完成したのが、こちらのチャート。「とにかく行動するタイプ。考える時間があったら、やってみようと思ったことは全部やっていました」と言う加藤さんですが、改めて整理すると、やりたいことを積極的に他の人に話したり、情報収集をするなど、みっつの大事なポイントに通じていることがわかりました。
ステップチャートで、
目標達成への順序だてをしてみよう
さらに、もうひとつ思考の達人ツールを使っていきましょう。ステップチャートを使って、目標や、実現したい未来に向かうための順序だてをしていきます。やりたいことのために、今やるべきことを逆算し、はっきりさせていく方法です。
最初に、ステップチャートのいちばん下に書き込むのは、加藤さんの目標。「子どもを理由に『いま』を諦めなくていい社会をつくる」と書いてもらいました。
じゃあそのために、今頑張っていること+今頑張るべきことって、どんなこと?加藤さんの実践していることを、いちばん上の段に書き込んでいきます。
そういう未来に向けて今の自分に足りてないことって何だろう?次に頑張りたいことってなんだろう?ちょっとだけ先の目標や課題を、上から2番目に書き込んでいきます。
意外と、この段階が難しい。抽象的なことと、目の前の具体的なことの、ちょうど真ん中なので、なかなか言語化できないことも。周りの人に客観的なアドバイスをもらいながらやってみるのも、有効な方法です。
最後は、下から2番目。最終的な目標を達成するためには次にどんなことが必要なのか、何が実現されていなければならないかを考えて言葉にしてもらいます。抽象的でもOK。そうしたら、完成です!
「天才」はマネすることができる
様々な分野で活躍している子どもたち。彼らを、ただ「天才」と一言に片付けてはいけません。何かやりたいと思って行動を起こしている人たちは、それを支える熱量を持ち、実現したいことを具体的に考えています。頭の中で考えていることを、他の人にもわかるように整理することで、他の人もマネできるものになるかもしれません。自分でも新しい気付きを得るきっかけにもなります。
今回、比較的書くのは苦手だという加藤さんが、ブログで過去の自分の行動を確認しながら「こうやって自分の考えややったことをまとめておいてよかった」とお母さんとお話している姿はとても印象的でした。言語化したり、整理したりして、残しておくのは大事ですね!
難しいことやわからないことも、ツールを使うことで、わかりやすく整理したり、自分なりの考えを見つけることができます。じっくり考えてみることで、「天才」になるのは難しくないのかも? 子どもと一緒に思考や考え方の整理に役立つ、思考の達人ツール。今回使った2種類の他にも、用途に合わせて様々なものがあります。目的に合わせて、使ってみてくださいね。
※2021年3月でまなびwithはサービスを終了いたしました。2021年4月から、「思考の達人ツール」は小学生向け通信教育「名探偵コナンゼミ」にて展開しています。