「わたしたちが子どもの頃とは全然違う」。子育てをしている親なら誰しもがこう感じたことがあるのではないでしょうか。
テクノロジーの進化、国際化による多様化、いろんな要因で子どもたちを取り巻く環境は大きく変わったと実感するとき、同時に思い悩むのは、現代の子どもたちはどう成長していくのか、そしてわたしたち大人はどういう教育を与えたらいいのかということ。
今回は「今の小学1年生の子どもたちに必要なものは何か」にスポットを当て、そのヒントを探るため、ある人物にインタビューを行いました。
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小学1年生はみんな天才。子どもは変わっていない。
「仕事を通して6~7歳頃の子どもたちにたくさん会ってきて思うのは、どの子も非常に個性的。土遊びが好きでずっと穴を掘っている子とか、やたら虫の名前を知ってる子とか。それだけでは大人には評価されないかもしれないけど、これらを極めさせたらすごいことになると思いませんか。小学1年生は、みんな天才だと思います。」
こう語るのは、小学館の学習雑誌『小学一年生』の現編集長、長竹俊治氏。『小学一年生』と言えば、その名を知らない世代がいないといっても過言ではない。1925年創刊以来、小学1年生に向き合ってきた小学館の顔とも言える雑誌だ。長竹氏は過去に児童学習誌の他にも女性ファッション誌やママ&キッズファッション誌の編集に携わり、2019年春から同誌の編集長を務めている。
ちなみに、小学館の通信教育「まなびwith」の前身「ドラゼミ」はもともと『小学一年生』掲載されていたドラえもんの「まいにちドリル」の好評を受け、通信教育として事業化したもの。現在誌面には、まなびwith入門編ドリルが毎号掲載されている。
『小学一年生』のコンセプトは、子どもたちの“未来を作る好きを育む”雑誌。無限の可能性をもった子ども達が誌面の記事を読んで各々の才能に気づき、伸ばしてほしいという願いがある。
「ある特定のタイプの子に向けて発信しています、というのではなく、むしろ逆なんです。可能性を持っている子たちの芽をつまないような情報発信を意識しています。」
冒頭でもふれたとおり、さまざまな要因による社会の変化を背景に、自分で問題提起し、自分で考え、仲間と助け合っていかなくてはならない時代。画一的であるべきとされていた親世代の教育とは異なり、最先端な教育ほど「個性重視の教育」に変わってきている。ただ、そんな社会の変化とは無関係に、子どもたち自体は変わっていないとも話す。
「先日、地方に ”こども留学” を取材に行く機会があって。都会が苦手な子どもたちも参加しているプログラムなのですが、そこで元気を取り戻している様子を見ると、やはり子ども自体は変わっていないと思います。都市が悪いということではなく、子どもが個性をいきいきと発揮できる機会が大事だということです。」
各々の“好き”が豊かな世の中を作ることに直結する。その「好き」を育てる機会をつくる。
『小学一年生』は1年で読者が変わるという稀有な雑誌だ。それでもいつの時代もこの時期の子どもの興味関心には「普遍の王道」があるのだと言う。『小学一年生』の企画で言えば、ダジャレのような言葉遊びや、動物ネタ、ドラえもんのひみつ道具の付録などは、毎年好評の企画だ。
「ただ、『小学一年生』という雑誌においては、それらはすべて ”とっかかり” なんです。どの企画も、子どもの興味がありそうなことを入り口にして、それで遊んでうちに自然になにかを学んでいるという仕掛けを、編集部をはじめ、有識者、クリエイターが力を注いで作っています。」
実際、『小学一年生』の企画は、キャラクターを中心とした読み物や付録、ちょっとしたゲームに至るまで「ただ面白い」で終わらない。例えば、2019年度の連載「コんガらガっち 月刊とにかくやってみそ!」はNHK Eテレ「ピタゴラスイッチ」などで有名なクリエイティブグループ、ユーフラテスが手がける絵本『コんガらガっち』の新シリーズ。写真の回では、楽しく読み進めていく途中にところどころ現れる空欄を埋めていくと、自分が主人公の小説が出来上がる。
家の中を探検するストーリーの中で質問に答えていくことで、普段使う道具などに新たな発見を得たり、自分の家庭の「あたりまえ」が他ではそうでないと発見したりすることができる。
「これからは、各々の“好き”を活かすことが豊かな世の中を作っていくことに直結する時代だと思います。いろいろな人と繋がることが容易なこの時代、“自分の好き”と”他の人の好き”を掛け合わせることで、もっと素敵な世の中になる。この雑誌を通して、自分の「好き」を見つけて、育てていってほしいですね。」
良質な教育コンテンツを、広くあまたに届ける。『日本一安い教育サービス』としての『小学一年生』。
誌面を特集主義に切り替える決定も、その想いの現れのひとつ。2020年4月号より、『小学一年生』は毎号1つのテーマをさまざまな角度から掘り下げていくスタイルに誌面をリニューアルする。
「年間を通して読めば、小学1年生版のリベラルアーツになると言ってもいい。単純に子どもだましの情報ではなく、しっかりとした第一人者が企画ごとに監修についています。コンテンツの質はとても高いです。通信教育なら月3,000円〜、塾だったら月5,000円ほど。そんな中、『小学一年生』は毎月1,000円。安価で質の高い教育コンテンツをあまたに広く供給するというのも使命だと思っています。」
子どもたちの「やってみたい」を最大限に引き出す、紙媒体の可能性。
実は、出版不況と言われる中で唯一児童書は売上が伸びていることをご存知だろうか。これを長竹氏は「親が子どもの教育は紙で与えたいと思っている現れなのでは」と言う。さらに、デジタルコンテンツが溢れているからこそ、紙媒体であることの強みがあると話す。
「動画やVRで体験した気になっても、実体験には絶対かなわないんです。だから、例えばVRでクジラを見ることができても、その子が実際にクジラを見に行かなかったら意味がない。子どものアクションのきっかけになるようなしくみを作ることが重要であるとすると、紙媒体がデジタルに及ばないとは思っていません。むしろ児童学習に親和性がある紙だからこそできることがあるんじゃないかと。また、必要に応じてデジタルと誌面を掛け合わせる仕組みを作れるのも我々の強みだと思います。」
これからの教育に向き合う親同士のコミュニティも必要。
『小学一年生』は、競合誌がないという意味で、唯一無二のブランド力を持つ雑誌。そのブランドが持つ使命は、子ども向けの学習雑誌としてのみならず、親向けの教育メディアとしても重い。同誌の別冊の親向け雑誌「Hugkum」や、同名のwebサイトでは、日々の子育てに関する情報はもちろん、これからの教育について情報発信をしている。
「このブランドをしっかり使って、新しい教育のあり方について情報発信していくのはもちろん、教育に関心のある親御さんたちのコミュニティを作り上げていきたいという想いもあります。親御さんたちの気持ちに寄り添いながら、皆さんがお子さんの“好き”を信じて成長をあたたかく見守れるようになるマインドイノベーションに取り組んでいきたいと思っています。」
いかがでしたでしょうか。子どもたちの“未来を作る好きを育む”、という『小学一年生』のコンセプトの背景に広がる、普遍的な子どもたちの可能性、これからの社会、そして教育の変化。未来を生きるお子さんの成長に向き合うとき、ぜひ、思い起こしてほしいと思います。