子育て

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スクールカウンセラーに聞く、入学後のトラブル、どう対処する?

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まなびwithラボが、2020年春に小学校に入学するお子さんをお持ちの保護者にとったアンケートによると、入学に際し「不安を持っている」と回答した人は約6割。

学校生活で、お友だちとの関係、学習のことなどに困ったとき、どのように対処したらいいのか、また、スムーズに小学校の生活をスタートさせるにはどうしたらいいのかなどをテーマに、来春小学校入学を控えるお子さんをお持ちの保護者とスクールカウンセラーの先生による座談会を行いました。

<登場人物紹介>

伊藤さん:第一子の娘がこの春入学。本人は入学を楽しみにしているが、とても真面目な性格なので、スポーツや勉強といったさまざまな評価軸を本人がどうとらえていくのか親としては気になるところ。

北田さん:長女(第一子)が入学予定だが、本人は入学に対しては少々不安そう。親から見ても、現在通っている幼稚園では特定のお友だちにべったりなので、入学後にまわりに馴染んでいけるのか不安。

山根さん:次男が入学予定。第二子ということもあり不安は少ないが、現在、小3の長男の学校生活において学校とのやりとりに戸惑うこともあり、1年生からどんなことに注意しておくのがよいかを知りたい。

石井裕美 先生:臨床心理士・公認心理師。

大学病院小児科での小児と保護者へのカウンセリング、小中学校のスクールカウンセラーとして約10年従事。現在、上智大学非常勤講師として教職を目指す学生に向けて教育相談の講義も担当。子どもに関する相談では、心身症、発達障害、不登校などの相談を受けることが多い。

入学後の「学校生活への不慣れ」に起因する問題は、しばらく様子見をする保護者が多い?

山根:うちは第二子だし本人も楽観的なのでそこまで不安はないですが、長男のときは本当に不安でしたね。ちゃんと座って話が聞けるの?とか。

北田:娘は同い年のお友だちと距離を縮めるのにとても時間もかかるタイプなので心配です。でも心配だからといって「うちの子どうですか?」といきなりグイグイいくわけにいかない気もしていて…

伊藤:入学後すぐにスクールカウンセラーに相談される方はわりといるんですか?

先生1年生の時点での保護者からの相談は、実は少ないです。慣れていく時期だから、ちょっとうまく行かなくても仕方ないか、という姿勢の方が多いと思いますね。着席できないとか登校をしぶるような場合でも、環境の変化に起因するものであれば、慣れていけば収まる傾向にあります。長期化する場合に相談にいたるというケースが多いです。

北田:なるほど。あと、低学年のうちは担任の先生も手厚くやってくれるけれど、3年生ぐらいになってくるとそうもいかなくなってくる、と聞いたことがあります。

先生:学校によっては、低学年と3年生以降で担任の先生一人に対する生徒の数が増えることもありますし、3、4年生になると学習のハードルもが上がります。現場では、この頃に相談が増えてくる感覚はありますね。本人が直接相談にやってくることもあります。

子どもの様子がいつもと違う?小さなことでも担任の先生に聞いていいの?

山根:1年生はなかなか自分で相談することができませんよね。実は長男が1年生の頃、登校しぶりをしたんですが、そこではじめて、学校生活で本人がやりづらさを感じているということが発覚したことがあって。そこまで行く前に気づけなかったのかなと悩んだことがあります。

先生:お子さんによってはサインをうまく出せないこともあるので、担任の先生からの情報がきちんと入ってこないと気づけない場合もあります。そういうお子さんの場合は、少しでも気になる様子が見えたら、まず担任の先生に様子を聞いてみる。連絡帳で「最近どうでしょう」と一筆書くだけでも良いと思います。

伊藤:うちは、幼稚園のお迎えのときに明らかに表情が沈んでいるとか、園での様子を話したがらないとか、娘がとてもわかりやすいので、その都度本人に原因を聞くことができます。

先生:年長さんであることを考えると、サインの出し方がとても上手だと思います!小学生であれば、宿題をやりたがらないだとか、いろいろサインはあると思います。

北田:でも、多くの親御さんが「これくらいで先生に聞いていいの?」とも思っていると思うんですよね。モンスターペアレント扱いはされたくないというか。先生たちはその点、どういう感覚でいるんでしょうか。

先生:おそらくなのですが、親御さんとどう関わっていいのか、どこまで何を伝えていいのか、伝え過ぎて悪く思われないか、距離感を気にしている先生はたくさんいると思います。こちらから質問をすることで、「この親御さんは知りたいタイプの人なんだな」と認識してもらえば、情報が入ってきやすくなると思います。

学校生活について、うまく子どもから話してもらうには?

北田:そもそも、「今日どうだったの?」と聞いたときに子どもがたくさん話してくれたらいいですよね。

山根:よく聞くのは、女の子はこと細かに話してくれるけれど、男の子は「楽しかった」の一言で終わるという・・・うちはまさしくそうですが。伊藤さんの娘さんは態度がわかりやすいとのことですが、よく自分から話しますか?

伊藤:特別なイベントがないと自分からは話さないですね。でも掘り下げて聞くように心がけています。仕事が忙しくてできないこともあるんですが、いつもと違うなと思ったら必ず一問一答のようなかたちで聞いています。そうするとやはり友だちとトラブルがあった、ということはありますね。

先生:1年生には言葉の説明は難しいので、出来事はたくさんあるんだけど、何を言っていいのかわからなくて「楽しかった!」でまとめている場合もあります。そういうときは、「勉強のことでなにかある?」「休み時間は何をしたの?」とか、具体的に場面や状況を想像させるような質問をすると、話しやすくなると思います。

友だちとのトラブル、いじめに繋がりそうな案件には学校も敏感。本人の気持ちに応じて相談を。

北田:実は幼稚園で娘が外見のことでお友だちにネガティブなことを言われ続けた時期があって。その子も悪意はなく、先生に相談してうまく収束してもらったんですが、小学校では別のお友だちも増えるし、似たようなことが出てくるのではと思っていて。

先生:いじめに繋がりそうなことには学校も敏感なので、しっかり学校に相談するとよいと思います。スクールカウンセラーに相談に来た場合、基本的には、された子がどうしてほしいのか、どうしたら学校生活を送りやすくなるかを重視して対処することが多いです。たとえば、高学年では友だちの関係なども複雑になっていて、「先生には知っておいてほしい、でも直接注意はしてほしくない」といったことも出てきます。

伊藤:1年生くらいの子どもが目に見えた悪意でもっていじめをする、というようなことはなかなか想像できないのですが…。

先生:何かしらのフラストレーションの現れなどで周りへの当たりがきつくなってしまう子がいた場合に、クラスの雰囲気に影響して、1年生でも意図的に意地悪をしているように見える状況、あるいは「意図的に仲間はずれにしているように見える状況」が生まれてしまうこともあります。いずれにしても、仲間はずれにされている子がつらいと感じているようであれば、しっかり先生に入ってもらうことが大事です。ちなみに低学年の子で、自らスクールカウンセラーに相談にくるケースでは、最も多い原因は「仲間はずれにされた」なんです

山根:その場合、その子に対してカウンセラーはどう対処するんですか?

先生:相談場所があるということがまず大事なので、しっかり受け止めること。それから、スクールカウンセラーの先生は週に数回しかいないことがほとんどなので、不在の場合でも安心して学校生活を過ごせるように、別の先生にしっかり繋いでおく。「どの先生が話しやすい?」など、しっかりと本人とヘルプルートについて相談します。

伊藤:子どもが直接いじめの問題についてカウンセラーの先生に相談した場合、すぐに親に共有されるんですか?

先生:そのときの状況、つまり、その子の傷つき具合や担任の先生の判断にもよります。初回の相談でも深刻ないじめの要素があれば連絡がいくと思いますし、他の学習面や生活面のことにおいても、最終的に担任の先生の判断になることが多いですね。

学習の遅れが原因で自己肯定感が持てなくなっていくことも。

山根:学習面の話でいくと、3~4年生で相談案件が増えるというお話を聞いて、学習の遅れのサインにはどのようなものがあるのか気になります。テストの結果が悪いとか?

先生テスト結果等のパフォーマンスはもちろんですが、意欲低下が顕著になる、というパターンも多いように思います。やる気がないだけ、と捉えられがちでもあるのですが、本人の能力に対して課せられている課題が高すぎる、という環境では意欲低下が進んでいってしまうことが多いです。

山根:課題がクリアできないことが続いて「自分はできないんだ」という流れになるのが怖いですよね。

先生学習の遅れが及ぼす影響で一番心配なことは、自己肯定感が持てなくなることだと思います。どうせやっても自分はだめだ、という感覚が強くなると、対人関係なども含め様々な課題に取り組むことが難しくなり、回復にも時間がかかります。解決のアプローチでは、その子の状態に合わせて、ということが重要になるので、まず、その「学習の遅れ」がどういう要因からきているのかというアセスメント(査定)が大切です。

入学に対して不安がっているお子さんには、「不安が多くて当たり前!」と言ってあげよう。

北田:ここまで、入学後の対応などの話でしたが、実は現在、娘自身が小学校入学に対して全く前向きじゃなくて。通学路もわりと長距離だったり、とても仲の良い幼稚園のお友だちと同じクラスになれなかったらどうしよう、など不安が多いみたいです。

山根未知のことだから不安も大きいんでしょうね。そういう場合はどうしてあげるのがいいんでしょうか。

先生:通学路であれば、「じゃあ歩いてみよう!」と実際にやってみて、どんな道をどんなふうに歩いて、どのくらいの大変さだったか、ということを具体的にイメージできるようになることで安心できる子もいます。その中で、例えば「あの家の前にきれいなお花が咲いてたね」というような子どもが楽しめるようなポイントを見つけてみることも役立つかもしれません。

山根:イメージができれば不安が緩和されるというのは、子どもだけじゃなくて大人にも言えますよね。

伊藤:確かに、私も娘の入学にあたって、放課後の活動や生活スケジュールについてどうしようかなと思っていましたが、利用できる施設や習い事など、細かく調べてシュミレーションをしたことで緩和された気がします。

先生:それから大事なことなのですが、気持ちの面で、必ずしも楽しみにしなくても良い、と伝えてあげるということ。「不安の方が多くて当たり前、それでいいよ!」とお母さんがいってあげる。すべて解決しよう、ということではなく、まず気持ちを受け止めてあげるということに、意味があります。

北田:不安だからこうやってみよう、とたくさん提案するのも大変だし、提案されたことをこなせなかったとき、子どもも大変。気持ちを受け止めてあげるのが、大切なはじめの一歩なんですね。

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