毎月テーマに沿った本をご紹介する「オトナも読みたい!今月の本」。
今回は、「ナンセンス、言葉遊び、だじゃれ、とにかく面白い本」をご紹介します。
「ナンセンス、言葉遊び、だじゃれ、とにかく面白い本」4選
- 1.『大名行列』 シゲリ・カツヒコ=作・絵(小学館)
- 2.『ほんとはスイカ』 昼田 弥子=作/高畠 那生=絵 (ブロンズ新社)
- 3.『いろはのかるた奉行』 長谷川義史=作・絵 (講談社)
- 4.『ブンとフン』 井上ひさし=作 (新潮文庫)
『大名行列』
シゲリ・カツヒコ=作・絵(小学館)
幼児から大人まで
奇想天外! とんでもなく面白い大名行列
絵本だからできる「ありえない世界」への旅。ページをめくって出てくる絵の楽しさ、面白さをとことん追求しています。はじまりは、「したにー、したに」の声とともに、大名行列が進んでいきます。家来たちはカゴにお殿様をのせて進んでいたのですが、あっというまにお殿様はどこかへ飛んで絵本の外へと消えてしまいます。
やがて忍者が現れ、バケモノまでやってきて、いつのまにかマンモスも出現して、気がついたら海のなかへも行列はつきすすみ、宇宙人まで参加して、そして……。すべては、子どもの遊び場の中から生まれた世界です。奇想天外のとんでもなく面白い大名行列の絵本、のぞいてみる価値は大いにあります!
【作者】―シゲリ カツヒコ(1962~ )岐阜県生まれ。専門学校卒業後、イラストレーターとして仕事を始める。リアルで迫力がありながら、どこかユーモラスな絵が持ち味。絵本作品に「カミナリこぞうがふってきた」「ごじょうしゃありがとうございます」(共にポプラ社)、その他の作品に、「アイアン・マン」「マジックショップ」シリーズ(共に講談社)、「妖怪伝」シリーズ(ポプラ社)などがある。
『ほんとはスイカ』
昼田 弥子=作/高畠 那生=絵 (ブロンズ新社)
低学年から大人まで
言葉遊びがゆかいな物語をつむぎだす
言葉遊びの絵本に、一つ傑作が誕生しました!登場するのは、イトウくんと、元スイカ。「ス」を落として、スイカからイカになったらしいのです。ところが、困ったのは、落とした「ス」がイトウくんにはりついて、「スイトウ」になったこと。さらに、文字が落ちたりくっついたりしては、おかしなことになっていきます。
言葉遊びがどんどん過激でゆかいな物語の世界をつむぎ、高畠那生さんの絵がなんともいい味を加えています。「イトウ」くんが、なんでこんなことになるのか、言葉遊びを具象化すると絵本がこんなに面白くなるなんて……。結末にいたるまで、ページをめくる楽しさがすごすぎます。
【作者】―昼田 弥子(1984~ )岡山県生まれ。童話作家、絵本テキスト作家。子どもの本専門店メリーゴーランド「童話塾」出身。2011年「つえをかいに」が第4回絵本テキスト大賞の優秀作となる(改題して『ノボルくんとフラミンゴのつえ』として刊行)。
『いろはのかるた奉行』
長谷川義史=作・絵 (講談社)
中学年から大人まで
だじゃれの世界がおもしろすぎる
長谷川義史さんの絵がまずおもしろいのですが、この本では、「正しいいろはがるた」と、お笑い好きの「〈いろはのかるた奉行〉の考えたことわざかるた」が同じページに並んでいて、どのページをめくってもゆかいな絵と解説がついています。
本来のことわざの知恵に負けず劣らず、「かるた奉行」のだじゃれやギャグのことわざもあなどれません。「ぴんぽんひまなし」、「かじきにおいつくまんぼうなし」…、正しいことわざよりも、かるた奉行のこしらえたことわざの方になんともいえない力があって、ついついそちらの方を覚えてしまいそうです。
【作者】―長谷川 義史(1961~ )画家、イラストレーター、絵本作家。大阪府藤井寺市出身。大阪府立長野北高等学校卒業後にデザイン会社に就職。グラフィックデザイナーを務めた後にイラストレーターに転向。2001年に『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』で絵本作家として活動開始。『おたまさんのおかいさん』で 講談社出版文化賞絵本賞(2003年)受賞、『ぼくがラーメンたべてるとき』で 小学館児童出版文化賞(2008年)を受賞。ユーモラスでおおらかな作風で、当代の人気絵本作家となる。
『ブンとフン』
井上ひさし=作 (新潮文庫)
高学年から
井上ひさしの痛快なナンセンス文学
小説家の「フン先生」が書いた小説『ブン』の主人公「ブン」は、できないことなどなにもないという大泥棒で、フン先生に与えられた能力によって小説の中から飛び出してきたというのです。ブンは、ニューヨークの自由の女神の手に巨大なソフトクリームを持たせてみたり、奈良の大仏と鎌倉の大仏をにらめっこさせてみたり……。
次から次へと世間が大騒ぎする事件を起こしてしまいます。そして、ブンの生みの親である「フン先生」もブンの騒動にまきこまれてしまいます。なんでもありの奇抜なストーリーと、卓抜した笑いのセンスで読者を次々と楽しませてくれる作品です。
【作者】―井上ひさし(1934~2010)。山形県生まれ。放送作家、劇作家、小説家。上智大学に入学し、浅草喜劇に興味を持ち、戯曲やシナリオを書く。NHKテレビ『ひょっこりひょうたん島』の台本執筆等、頭角を現す。小説『手鎖心中』で第六七回直木賞を受賞。『吉里吉里人』などのナンセンス文学というジャンルを確立し、文芸の多方面で活動を続け、日本劇作家協会会長、日本ペンクラブ会長なども務めた。
家族でよめば楽しさ倍増!
いかがでしたか?それぞれ異なった角度からの「面白さ」が伝わってくる作品かと思います。ぜひ家族で読んでみてください!
著者プロフィール
- 佐藤友樹
- 小学館の通信教育「名探偵コナンゼミ」の作問者。予備校講師、受験塾講師などを経て、国語問題の作成および分析のプロとして活躍。言葉への造詣が深く、愛情をもった指導に定評がある。著書に、ドラえもん学習シリーズ『ドラえもん国語おもしろ攻略 百人一首を楽しもう』『ドラえもん国語おもしろ攻略 敬語早わかり』(ともに小学館)など多数。