ドラゼミの問題作成者である佐藤友樹先生が毎月テーマに沿った本をご紹介する「オトナも読みたい!今月の本」。
5月は母の日にちなんで、魅力的で印象に残る「おかあさん」を描いた作品をテーマに、4冊の素敵な本をご紹介します。
【母の日に読みたいオススメの4冊!】
1 『おかん』平田 昌広=文/平田 景=絵 (大日本図書)
2 『きつねのでんわボックス』絵本版 戸田和代=作/たかすかずみ=絵 (金の星社)
3 『かあちゃん取扱説明書』 いとうみく=作/佐藤真紀子=絵 (童心社)
4 『まゆみのマーチ―自選短編集・女子編』 重松清=作 (新潮文庫)
『おかん』
平田 昌広=文/平田 景=絵 (大日本図書)
幼児から大人まで
絶対に答えてくれる人がそばにいることの幸せ
「なあ、おかん。」と何度も何度も話しかける男の子とおかんの会話で進んでいきます。ごはんを作っているときも洗濯をしているときも、「なあ、おかん」と話しかける男の子。
じゃまだったり、ばかなことをしてきたりしても、ちゃんと答えてくれるおかん。いつでも後ろにくっついてきて、「なあ、おかん」「なに」「呼んでみただけ」……。
どんなときでも、どんなことでも、呼べばちゃんと答えてくれる人がそばにいることの幸せが伝わってきます。
だから、いつでも「なあ、おかん」と言ってみたい男の子の気持ち、よくわかります。おかんがいるから安心して、毎日楽しく生きていけるんです。「おとん」「おとんとおかん」も姉妹篇で、面白いです。
【作者】―平田 昌広(1969~)神奈川県生まれ。夫人の平田 景さんが絵を担当し、2002年に楽しい本を作る「オフェイスまけ」を設立。夫婦共作の絵本は、『ひものでございっ!』『ピーマン にんじん たまねぎ トマト!』(いずれも文化出版局)、『なっちゃんの ほくろスイッチ』『のりおのふしぎなぼうえんきょう』『かいてんずしだいさくせん』(いずれも講談社)『ねえ、ほんとにたすけてくれる?』(アリス館)『おとん』『おかん』(大日本図書)など多数。神奈川県三浦市在住。
『きつねのでんわボックス』絵本版
戸田和代=作/たかすかずみ=絵 (金の星社)
低学年から大人まで
かあさんの声が聞きたい…、子どもの声が聞きたい…
夕方になると、町外れにある電話ボックスに小さな男の子がやってきます。男の子の母親は病気で入院しています。お母さんの声が聞きたくて、毎日電話をかけに来ているのです。
それをじっと見守っていたのが一匹のきつね、子どもをなくした母ぎつねでした。男の子が電話でお母さんに話しかけるを聞いて、子ぎつねのことを思い出していたのです。
ある日、電話ボックスが使えなくなっているのを知ったきつねは、やってくる男の子のためにあることを……。
ロングセラーの名作童話を、たかすかずみさんの美しい絵によって一冊の絵本にしています。童話版もおすすめです。
【作者】―戸田和代 東京都生まれ。『ないないねこのなくしもの』(くもん出版)で日本児重文芸家協会新人賞『きつねのでんわボックス』(金の星社)でひろすけ童話賞を受賞。日本児童文芸家協会会員、日本文藝家協会会員。他の作品に、『つきよのくじら』( すずき出版)『トイレのかめさま』『ゴロジ』(学習研究社)『カバローの大きなロ』(ポプラ社)『だんまり』(アリス館)『おばけがっこうぞぞぞぐみ』(岩崎書店)など。
『かあちゃん取扱説明書』
いとうみく=作/佐藤真紀子=絵 (童心社)
中学年から大人まで
かあちゃんは敵に回すとやっかいだ!
「ぼく」の家で、一番いばっているのは「かあちゃん」です。朝からガミガミうるさくてこまっています。
「ぼく」は、そんな「かあちゃん」の日常のありのままを学校の作文に書きました。これを読んで大笑いした父ちゃんが、こっそりとかあちゃんの扱い方のアドバイス(「かあちゃんはほめるときげんがよくなるんだ。」)をくれました。なんといっても、父ちゃんが一番よくわかっています。
そして、「ぼく」は、危険な「かあちゃん」の「取扱説明書」を書きはじめるのですが……。ユニークな発想と母親と子どもをユーモアたっぷりに描く物語です。
【監修】―いとうみく(1959~)神奈川県川崎市生まれ。現代の子どもたちが生き生きと輝く児童文学作品を積極的に発表している。『糸子の体重計』(童心社)で第46回日本児童文学者協会新人賞受賞、『空へ』(小峰書店)で第39回日本児童文芸家協会賞受賞。その他の作品に『おねえちゃんって、もうたいへん!』(岩崎書店)、『ひいな』(小学館)『カーネーション』(くもん出版)等がある。
『まゆみのマーチ―自選短編集・女子編』
重松清=作 (新潮文庫)
高学年から大人まで
いつだって母親は最大の応援団長
本作の題である「まゆみのマーチ」とは、学校へ行くことができなくなっていたまゆみを勇気づけるために、母親がいつも歌ってくれていた歌のこと。アニメの曲にあわせて「まゆみが好き、好き、好き」とくり返すだけの替え歌です。
まゆみと二人で、ふつうに歩けば子どもの足でも十五分ほどの小学校までの道のりを、何日も、何週間もかけてすこしずつ学校へ行けるように、毎日よりそって歩いていた母親の愛情あふれる様子が胸を打ちます。
母親の葬儀の後、妹からこの話を聞いた語り手の「僕」にも、子供の頃の妹まゆみと同じような不登校の息子がいるのですが、「まゆみのマーチ」の話を聞き、自分も母親と同じように息子のために最後までよりそっていくことを決意します。
【作者】―重松清(1963~ )小説家。岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒。角川書店勤務を経て、フリーライターとして独立。一九九九年「ナイフ」にて坪田譲治文学賞、「エイジ」にて山本周五郎賞、二〇〇一年「ビタミンF」にて直木賞、二〇一〇年「十字架」にて吉川英治文学賞を受賞。旺盛な創作活動を続けている。小学生を主人公とした作品も数多く、現在最も中学入試によくでる作家として注目されている。
「母の日」の機会にぜひ読んでみよう
いかがでしたか?母の日にお母さんへの感謝の気持ちを伝えるタイミングで手にとっていだだければ、より深くお読みいただけるかもしれません。