近年増加を見せる子どもの薬物乱用。ニュースを目にしてハッとする保護者の方も多いのではないでしょうか。
今回は中学校時代に「広島県薬物乱用防止啓発ポスター」の入賞経験がある、現在高校3年生の山田 咲花(さちか)さん・初花(ほのか)さん姉妹にインタビュー。
「広島県薬物乱用防止啓発ポスター」を通して子どもの薬物乱用について深く考える機会をもった二人。学校の授業をはじめとした10代向けの薬物乱用防止に関する取り組みをどのように感じているのでしょうか。お話をききました。
さらに、インターネットなどに溢れるたくさんの情報と向き合い方や、10代の子どもたちに興味をもってもらえるような情報提供のしかたについても話してもらいました。
山田 初花さん(左)・山田 咲花さん(右)
広島県立高陽東高校の3年生。双子で同じ学校へ通っているため起きてから夜寝るまでおしゃべりが途絶えないという二人。同じ茶華道部に所属し楽しく茶の湯のお点前を探求しているという一方で、大好きな可愛い動物動画をお互い共有し合うという一面も。将来の夢はともに「人の役に立てる様な仕事に就く事」
目次
薬物乱用防止の授業は、もっとアウトプット型にすべき
通っている高校では総合学科に所属。生徒の志望先もバラエティに富んでいるがゆえに、いろんな考え方の持ち主と話し合って意見を深めていくという授業が普段から多い彼女たち。現在行われている薬物乱用防止の授業について、アイデアを聞いてみた。
――薬物乱用について自分たちで調べたり、自分の意見をまとめるという機会が必要だと思います。
よくあるのが体育館などに集められて子どもの薬物乱用についてビデオを見るというスタイルの授業ですが、これではそのまま情報が流れていってしまう。
そこで終わるんじゃなくて、その情報をもとに展開する授業の方がいいんじゃないかと。自分たちで調べてまとめることもできるし、ただ聞くだけよりももっと定着すると思います。
確かに、問題について自分たちだけで少しでも考えることができれば、意識は変わるはずだ。
<初花さんの特別賞受賞作品>
中学校の薬物乱用防止の授業後の「ぜひ家族でも今日話したことについて話し合ってほしい」という先生のコメントを受け、実際に母や祖母など家族と話をし、姉妹でも調べたことを教え合ったりしてポスターを制作した。「一つの情報に偏り過ぎると、自分で判断するっていうことができなくなると思います。なので、いろんな人に聞いたり、薬物を使ったことがある人の話を見たり聞いたりもしました。ネットでは、ちゃんとした公式のHPを見るようにしています」(初花さん)
10代の子どもたちが「薬物乱用」についてもっと身近に感じられる工夫が必要
さらにこんな意見も。
――知識を伝えるのであれば、伝え方の工夫がもっと必要。例えば子どもが薬物乱用に至るきっかけとして「先輩からの紹介」という事例が多いのは何度も聞いて知っていることですが、地域や学校によっては「本当に?」と実感が持てないこともあるのでは。
それよりもインターネットをきっかけとする事例の方が10代にはリアルに感じらたりもするので、そういった事例などを積極的に紹介していくという工夫も必要かなと思います。
10代が目にしやすいSNSや動画、インターネット広告などをきっかけとした薬物乱用の具体例を紹介していくことで、薬物乱用が起こっていることをより身近に感じやすく、防止の効果もあるのでは、というのが彼女たちの意見。
また、10代に伝わりやすい方法で伝える、ということも大切。
――長い一本の講習動画を30分見るのと、ショート動画など10代が興味を持ちやすいもので1、2分程度見た後に15分みんなで意見をじっくり話して自分の考えをまとめる、というのでは、薬物乱用に対する意識が全く異なってくると思います。
正しく伝えるための情報提供手段として子ども向けに展開してほしいのは……
二人が言うようにショート動画やSNSを中心としたインターネットコンテンツは10代に欠かせないもの。それを使った10代の薬物乱用防止の啓発も行われる一方で、インターネットで得た情報から薬物乱用に興味を持ったり、誤った知識を得ることも多い。どのような手段であれば、10代に、正しい形で「薬物乱用防止」を受け止めてもらえるのだろうか。
――きちんと専門家の監修がついている漫画はいいんじゃないかと思っていて。
普段、学習漫画だけじゃなくて、推理や歴史をテーマにした漫画を読むことによって化学や数学、地理、歴史などに興味を持つこともあります。
活字離れとはよく聞きますけど、漫画ならイラストもついてわかりやすくまとめられますよね。さらに漫画なら自分から手に取ることが多いと思うんです。自分から手に取ったもので得られる情報は結局最後まで頭に残っているような気がします。
自分で情報を判断し、正しい情報にたどり着くことが大切
自らどんどん情報を得られる現代。特に10代ともなれば、誤った情報に踊らされることも日常の中で多々あるだろう。それに振り回されないための情報収集、判断のコツを訊ねてみた。
――発信者の立場によって情報の出し方は異なると思います。薬物の情報で言えば、例えば、「体験談」という一見同じカテゴリの情報でも、警察の立ち場なら「薬物は破滅!」「ダメ!ゼッタイ!」「危険!」という文脈だろうし、医療の立場であれば「復帰することが大切」という文脈になったりする。
そういった違う視点の見方をいろいろ検索してみて、そこで共有している知識に注目していることが多いです。
このように自分の中で情報をかみ砕く過程を経ることで溢れる情報に踊らされない力を身に付けることは、10代の薬物乱用の防止策にもつながると言える。ぜひ家庭でも、情報の取捨選択の意識について話し合っておきたい。
<咲花さんの広島県薬物乱用対策推進本部長賞受賞作品>
学校の薬物乱用防止の授業から、薬物乱用は誰にでも身近なものであると感じた咲花さん。「使用してしまった人はどうなるんだろう?」という疑問を持ち、薬物を使用した人の体験談などを自分で調べて「家族の支えや社会の支えで更生できる」ということを知った。学校で見たビデオは薬物でただ人生が終わるという印象があり、そうではなく、元の生活に戻れるということを伝えたいと思い、このポスターを制作した。
いかがでしたでしょうか。学校の授業や薬物乱用防止啓発ポスター制作を通して薬物乱用問題をどうとらえたのか、10代のふたりならではの視点をお届けしました。
薬物乱用防止の取り組みに対して持っている印象や、薬物乱用問題の捉え方、インターネットの情報に対する姿勢などについて、お子さんはどのように考えているでしょうか。ぜひご家庭で話題にしてみてください。