10代の薬物乱用に関するニュースを耳にすることが多くなりました。。
「うちの子はまだ小学生だし…」「そんな環境ではないし…」と、普段あまり意識しないご家庭も多いかもしれませんが、大事な子どもたちが薬物の危険から身を守れるように、私たち大人も、薬物乱用に対する正しい知識、認識を持つことが大切。
今回は子どもたちの身近に潜む薬物乱用に関する情報について【基礎情報編】と【子どもへの対応編】の2回に分けて取り上げます。今回は【基礎情報編】です。
目次
薬物乱用には「違法薬物の乱用」と「医薬品の乱用」がある
薬物乱用と聞くと、「薬物乱用=逮捕」のイメージを持つ方が大多数かもしれませんが、実際はもっと身近にある問題です。
薬物乱用とは、「決められたルールを守らないで薬物を使用すること」。
決められたルールを守らないには、「違法薬物を法律というルールを守らないで使用すること」だけでなく、「日常で使う市販薬・処方薬・医薬品を決められた治療目的以外に不適切に使用することや、意図的に用法・用量を守らないで使用すること」も含まれます。
10代に広がる大麻の乱用は10数年で15倍に
違法薬物に注目すると、10代では、特に大麻の乱用が顕著です。令和になってから高校生の検挙者数が増えてきており、中には中学生で検挙されるケースも。全体の検挙人員は減っているにも関わらず、10~20代は増えています。
【出典】厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000956682.pdf
また、最近では「危険ドラッグ」に相当する大麻類似の合成物質を含む可能性がある、いわゆる「大麻グミ」を食べた人が体調不良を訴え病院に運ばれたケースが例として挙げられます。「公園で人からもらって食べた」というケースもあり、薬物乱用とは縁がなさそうな小さな子どもでも巻き込まれる可能性の高い事案として、肝を冷やした保護者の方もいるのではないでしょうか。
薬物乱用のきっかけで最も多いのは「友人・知人」
さらに注目したいのが薬物乱用のきっかけについて。
「令和4年における犯罪組織の情勢」(警察庁)によれば、違法薬物の中でも特に若年層への広まりが顕著である「大麻」について、初めて使用した経緯は、20歳未満の80.2%が「誘われて」で最多。
大麻の入手先(譲渡人)を知った方法は、「インターネット経由」が3分の1以上を占め、そのほとんどがSNSです。他方で「インターネット以外の方法」では、「友人・知人」から大麻を入手しているケースが70%以上となっています。
【出典】
警視庁「令和4年における組織犯罪の情勢」より
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/index.html
違法薬物だけじゃない!
10-20代の薬物乱用で最も多い薬物は「市販薬」
だからこそ、家庭で対策を
また、調査によれば、精神科医療施設で入院あるいは外来で診療を受けた患者のうち、10-20代の主に使用した薬物として、最も多かったものは「市販薬」でした。次に「大麻」、「睡眠薬・抗不安薬」・「覚醒剤」の順で続きます。
【出典】全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2022年度)
特定の市販薬などの薬物を過量摂取するオーバードーズは、最悪の場合死に至る大変危険な行為にも関わらず、コロナ渦を経て、救急搬送される件数は増加しています。
また、市販薬を治療目的以外に使用する「適応外使用」は、表向きはいつも通りに過ごしているケースもあり、実際はもっと多くの子どもたちが日常的に適応外使用をしているのでは…、と医療機関、教育機関関係者から懸念の声がよく聞かれます。
違法薬物の乱用も、医薬品の乱用も薬物乱用の「きっかけ」「根本的な要因」は、子どもたちがそれぞれ抱えている悩みや問題であり、それを誰かに相談するなど人に頼ることができずに、結果として人ではなく物(薬物)に頼ることになったということを、まず大人は理解する必要があります。
他人事のように思ったり、話題として避けたりするのではなく、なぜ薬物乱用に至ってしまうのか、そもそもの原因に目を向け、その解決に力添えをするなど、薬物乱用に至る前や後でも、手を差し伸べ、寄り添い、働きかけが必要であることを知り、普段から、要因となりそうな悩みを抱えていないかを気にかけ、それに気づけるようにしておくことが重要なのです。
【出典】
全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/J_NMHS_2022.pdf
第2回医薬品の販売制度に関する検討会>資料>
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30972.html
いかがでしたでしょうか。子どもたちを取り巻く薬物乱用の現状について理解を深められたでしょうか。
次回は、【子どもへの対応編】です。子どもたちを薬物乱用の危険から守るためにできること、身の回りで薬物乱用が起こった場合の対処方法などについてご紹介していきます。