小学生のお子さんの不登校や行きしぶりに関するお悩みに、永井智先生(立正大学副学長・心理学部教授、公認心理師および臨床心理士)が答えていく全5回の連載企画「永井智先生の“心が軽くなる”不登校・行きしぶり相談室」。
第4回は、「キレる子どもに親もキレてしまう。どう接すればいいの?」です。
記事の最後には、永井先生によるお手紙カウンセリングのご案内もしていますのでぜひチェックしてみてくださいね。
目次
怒りがぶつかり合うことがストレスに。対処法は?
今回いただいたのは、お子さんの感情コントロールに関するお悩み。
怒っているお子さんに対してどのように接すれば良いのか、迷ってしまうようです。
キレる子どもへの接し方は?(小4・保護者)
キレる子にどう接していいかわかりません。つい母親も怒って(キレて)しまいます。学年が上がるにつれて感情がコントロールできていないことが増えてきています。
このお悩みに対して、永井先生はどう答えてくれたのでしょうか。
感情が先に動いてしまうのは自然な反応

キレるお子さんへの対応、本当に大変だと思います。毎日の関わりの中で同じような場面が繰り返されると、とても疲れてしまいますよね。
人間は、怒りをぶつけられると、ごく普通の反応として怒りが生じます。そのため、お子さんがキレることに対して、親もキレてしまうというのは、仕方のない反応です。頭では「冷静に対応しなければ」とわかっていても、感情が先に動いてしまうことは誰にでもあることです。親御さんも相当なストレスの中で関わっておられるのだと思います。
ただし、親御さん自身心配されているように、そのようなやり取りが頻繁に繰り返されることは、やはり望ましい状態とは言えません。キレたりキレられたりする関係は、強いストレスになりますし、後になって親子ともに自己嫌悪に陥ることもあります。また、感情をぶつけ合うやり取りが続くことで、怒りが怒りを呼び、関係全体がしんどくなっていくという悪循環が生じやすくなります。
感情をコントロールする力はまだ発達途中

ここで大切なのは、「キレる=問題行動」と単純に捉えすぎないことです。怒りそのものは、人間にとって自然で大切な感情です。怒りの感情は、何か不満や理不尽さを感じたとき、自分を守ったり主張したりするためのエネルギーにもなります。
キレてしまう行動についても、多くの場合は、お子さんなりに強い不満や困りごとを抱え、「どうにかしたい」「分かってほしい」と必死にもがいている結果であることが少なくありません。学年が上がるにつれて感じるストレスや求められることは増えていきますが、感情を調整する力はまだ発達の途中です。そのため、気持ちの処理が追いつかず、怒りという形で噴き出してしまうこともよくあることです。
感情と行動を分けた声かけが悪循環を和らげる

対応の第一歩として大切なのは、親御さん自身ができるだけお子さんのキレに巻き込まれないことです。
お子さんがイライラしている、何かに強い不満を感じているという事実自体は受け止めつつ、その感情の爆発に一緒に引きずり込まれないことが重要です。たとえばキレ始めたときには、怒りの内容に踏み込まず、「今すごくつらそうだね」「お話しするのは一旦ここで止めようか」とお子さんの状態に対して声をかけ、少し待ってみることが、悪循環を和らげる助けになるかもしれません。
お子さん自身が、自分の状態に気づき、キレる以外の形で不満を表現できるようになっていくと、キレる行動も減っていきます。そのためには、感情が比較的落ち着いているときに、キレることについて話し合う機会を持ってみるのもよいでしょう。
どんなときに、どんな気持ちになってキレてしまうのか、本当はどうしたいと思っているのか、周りにどうしてほしいと思っているのか、イライラがたまってきた時にキレる代わりにどんな行動をとれると良いかなどを、少しずつ言葉にしていくことが大事です。こうした関わりの中で、不満や要求を言葉にする力が少しずつ育まれていきます。
ただし、お子さんの状態によっては話し合おうとすることで、またキレてしまう場合もあるかもしれませんので、そのようなときには無理をする必要はありません。
重要なのは、関係を修復するやり取り

また、キレてしまった後の関わり方も重要です。感情が落ち着いた後に、「さっきはお互いしんどかったね」「でも話そうとしてくれたことは大事だったと思うよ」と、関係を修復するやり取りがあることで、子どもは「キレても関係は壊れない、やり直せる」という感覚を身につけていきます。これは、安心して人と関われる力を育てるうえでとても重要な経験です。
そして、もう一つ大切なのは、お子さんとの日常の中で信頼関係を大事にすることです。落ち着いているときに一緒に過ごす時間や、何気ない会話、笑ったり安心したりする経験など、日常的な信頼感や愛情の土台があることで、感情が荒れたときにも、関係を立て直しやすくなっていきます。
ときには専門家に相談して、子どもの特性や背景に合った関わり方を

ただし、キレる行動には人によってさまざまな背景があります。単に行動が習慣化している場合もあれば、自己肯定感の低さや強いストレスが背景にあるような場合もあります。どんな場面で、どんな理由で、どのようにキレるのか。家の中だけなのか、外でも起きているのか。そうした点を丁寧に見ながら、望ましい対応を模索していくことが大切です。
場合によっては、親だけの対応や工夫だけではどうしても負担が大きいと感じる場面もあると思います。これまで親御さんも、きっとたくさん試行錯誤を重ねてこられたことと思いますが、対応が難しいと感じるときには、カウンセラーなどの専門家に相談することも重要です。
専門家への相談を通して、これまでどのように対応してきたのかを一緒に振り返ることで、お子さんの特性や背景に合った関わり方を考えていくことができます。
キレる行動に対応するためには、キレているという行動だけを見るのではなく、その奥にある気持ちや背景を理解し、信頼関係を大切にしながら、少しずつ向き合っていく必要があります。すぐに変化が見えなくても、丁寧な関わりの積み重ねは必ず意味のあるものになります。どうか親御さん自身も無理をしすぎず、必要な支えを得ながらお子さんと関わっていってください。
永井先生プロフィール
永井 智先生 立正大学 教授
<経歴>
立正大学副学長・心理学部教授。公認心理師および臨床心理士の資格を有し、専門は発達臨床心理学。
特に「援助要請行動」に関する心理学的研究に注力し、「助けを求められない」子どもや若者への支援の在り方を探究している。筑波大学大学院博士課程修了後、2008年より立正大学に着任。スクールカウンセラーや精神科クリニックでの心理士としても活動経歴があり、臨床と教育の両面から心理支援の現場に関わり続けている。
著書に『中学生における友人との相談行動』など多数。
永井先生より、読者の皆さんへ
今回たくさんのご質問を拝見して、多くのご相談で担任の先生やスクールカウンセラーの方など、学校との連携ができると良いなという感想を持ちました。具体的に何か学校から対応してもらうようなことまでは必要ないという場合でも、情報共有をしながらお子さんを見守っていくことで、何かが起きた場合でも迅速な対応ができるようになります。
何らかのご事情で学校との相談が難しい場合は、その他の公的な相談機関や、支援を専門としている医療機関、民間の支援機関、大学の心理相談室などもぜひご活用ください。
私からの回答も、頂いた情報の範囲で状況をイメージしながらお伝えしているものですので、ご相談には書ききれないご事情などがある場合もあると思います。親御さんご自身も、悩みながら日々お子さんを支えておられることと思います。どうか一人で抱え込まず、周囲の支援を得ながら、少しずつお子さんと一緒に歩んでいけることを願っています。
お手紙カウンセリングのご案内
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言葉にしてみることで、心の中が少し整理されたり、不安や悩みを落ち着いて見つめ直せたりするかもしれません。
お送りいただいたお手紙には、先生から丁寧なアドバイスを添えてお返しします。
ゆっくりと言葉をやり取りすることで、少し心が軽くなる―――そんな時間をお届けできたらと思います。
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お手紙カウンセリング概要
■対象:
小学生のお子さまがいらっしゃる保護者さま
■料金:
2往復:4,000円
■先生からのお返事のボリューム:
1,200字程度/1回あたりのお返事
■募集人数:
2名/ひと月あたり
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