夏休みの宿題の定番といえば「読書感想文」。
なかなか書けずに苦戦する子もいれば、上手に書いて賞を獲得する子もいる。
ところでこの読書感想文は、いったい何を基準に評価するのだろうか。
青少年読書感想文全国コンクールを主催する全国学校図書協議会理事長・森田氏に、コンクールの審査基準を聞いてみた。
誤字・脱字や文章量は関係する?
森田「まず文章が募集要項の規定字数以下であるか、誤字脱字の有無、そして原稿用紙が正しく使えているか等が評価されます。原稿用紙の使い方とは、例えば「」(カギ括弧)の中に句点を入れるべきなのに入っていなかったり、といったことです。」
しかし実際には、それが同コンクールの審査に影響することは少ないそう。
同コンクールでは“学校で作文指導を受けている”ことを前提にしているため、原稿用紙の使い方や誤字脱字等は、応募段階で修正されていることが多いということだ。
本の選び方もやはり重要
同コンクールにおいて重要な審査基準となるのが「自分に合った本を選んでいるかどうか」。
森田「その子の発達段階に合った本を選んでいるかどうかは重視します。例えば小学6年生が小学1年生向けの絵本を読んで感想文を書いても、残念ながら素晴らしい読書感想文とは評価されません。」
その逆も同じで、例えばドストエフスキーの罪と罰のような難易度の高い文学小説を題材に小学校低学年の子が感想文を書いても、必ずしも高評価されるとは限らない。
森田「内容が難しすぎると、子どもは物語の本質や主旨を理解できないまま感想文を書いてしまうので、“上すべり”の文章になってしまうのです。どんなに上手に文章を書いていても、物語を深く理解していない文章だと、私たち審査員は見抜いていしまいます。」
お子さんが読書感想文の題材に悩んでいたら、子どもの年齢や学年に合った本を一緒に探してあげると良いかもしれない。図書館員や国語の先生に相談してもOKだ。
ただの「意見文」にならないように注意!
そして最後にもう一つ。「本の内容に則しているかどうか」も審査では重視されるという。
例えば戦争の本を読んだ場合。
「こんなにたくさんの人が亡くなったと知って驚きました。もう戦争はしてはいけないと思います。」
この文章であれば、戦争に関する本なら、どの本を読んでも書ける感想である。これはただの意見文であって、同コンクールでは評価され難い。
「こんな風に空襲で家族と離れ離れになってしまった主人公は、本当に辛かったのだと思いました。自分だったらあのときに、あんなに強くふるまえなかったかもしれません。家族について、人間の強さについて考えさせられました。」
これなら立派な読書感想文になる、ということ。
こんな文章を書くためには、主人公に自分を投影することが必要。そのためにも、自分の発達段階に合った本を複数回読んで感想文を書くことが理想的だという。
森田「最後に、誤解のないようにお話しますが、今回ご紹介したのはあくまでも我々が主催する「コンクール」の審査基準です。“読書感想文がこうでなければいけない”ということではありません。読書感想文は本を読んで自分が思ったことを1行書くだけでも、1年生にとっては立派な読書感想文です。読んだ本が漫画でも、電車の時刻表だっていいのです。読書感想文を書く目的は、本を読んで、自分で何かを思ったり、考えたりする、そしてその思いを言葉で形にすることですから。」
子どもが読書感想文に悩んでいたら、“何かを考える”きっかけになる一冊をプレゼントしてみてはいかがだろう。
<<森田盛行>>
青少年読書感想文全国コンクールを主催する全国学校図書協議会理事長。過去には30年にわたり学校の教員を務め、司書教諭の資格を持つ。