不登校や行きしぶりのお悩みを持つ小学生の保護者さまに向け、無料のオンライン講演会「学校がしんどそう…?そんなとき親ができること」が2025年9月27日に開催され、多くの方にご参加いただき、たくさんのご質問をお寄せいただきました。
そこで、特に多く寄せられた内容を取り上げ、講演会で講師を務めた永井智先生(立正大学副学長・心理学部教授、公認心理師および臨床心理士)に答えてもらう全5回の連載企画。第2回は「子どもの友だちとの付き合いについて悩んでいます(後編)」です。
記事の最後には、永井先生によるお手紙カウンセリングのご案内もしていますのでぜひチェックしてみてくださいね。
前編の様子はこちら
目次
友だち付き合いがなく、居場所が心配。
今回いただいたのは、友だちと関わることを避けているお子さんのご相談です。
友だちと積極的に関わりたくないと言います。(小1・女の子 保護者)
休み時間などに友だちと積極的に関わりたくない、一人になりたいそうです。一人で遊んでいると、友だちが自分のところに来て嫌な気持ちになるとのことです。
このような我が子の居場所はありますか。
さて、今回永井先生はどんなコメントをくれたのでしょう。
心地よい距離感やペースは人それぞれ
子どもの友だちづきあいは、親が最も気になることの1つです。しかし、人付き合いの心地よい距離感やペースは人それぞれで、どのくらい友だちと関わりたいかは一人ひとり違います (これは大人も同じですね)。そのため、友だち付き合いを負担に感じるお子さんがいても不思議ではありませんし、それ自体が問題というわけではありません。

お子さんは「一人でいる」のではなく「一人で遊んでいる」ということなので、何か一人でじっくり取り組みたい活動があるのだと思います。運動であれ創作活動やその他のことであれ、自分一人で何かに取り組むことができるというのは、自律性や創造性を育む大切な力ですので、それはとても素敵な資質だと思います。そして、そうやって一人で何かに取り組んでいるときに、ほかの人が来たら煩わしく感じるのも、自然なことだと思います。
自分の状況を説明するスキルを身につけよう
「居場所はどこにあるのでしょうか」というのは、例えば図書室に移動するなど、自分が一人になれる空間を見つけることが難しいということでしょうか。そのような物理的な居場所を確保することが難しい場合には、心理的な居場所を確保するため、自分の状況を説明するスキルを身につけることを目指せるとよいかもしれません。つまり友だちに、一人でいさせてほしいと上手に伝えることができるようになることです。
自己の意見や要求を伝える自己主張のことを、心理学では「アサーション」と呼びます。上手なアサーションには、要求伝達と他者配慮の2つが重要であるとされています。「邪魔しないで!」というふうに要求伝達だけをすれば、自分の要求は伝わりますが、同時に相手を嫌な気持ちにさせてしまいます。だからといって、相手の気持ちを優先して他者配慮をしすぎてしまうと、自分がストレスを抱え込むことになります。つまり、アサーションを通して自分の望んでいることを相手に適切に伝えるためには、他者配慮をしつつ、要求伝達も明確に行うことが大事です。

例えば、他社配慮と要求伝達を組み合わせて「ごめんね、今は一人で遊びたいんだ」などのように、丁寧に要求を伝えてみたりするといった工夫ができます。また、もしお子さんがいつでも一人でいたいわけではなく、友だちと遊ぶ時間も大切に思っているのであれば「後でまた遊ぼうね」と一言付け加えたりする言葉もありかもしれません。こうした言葉を繰り返し丁寧に伝えていくことで、周りも「一人で遊ぶのが好きなんだな」と、少しずつ理解してくれるのではないかと思います。
おうちの人と一緒に練習することで、安心感も高まる
このような言い方は、1年生にとってはまだ少しハードルが高いかもしれませんので、少しずつできるようになっていけば良いと思いますし、親御さんが友だちの役をして練習相手になってあげても良いですね。「もしお友だちが来たら、なんて言ってみようか?」と一緒に考えるだけでも、お子さんの安心感が高まります。
上手なアサーションは、大人でも苦手な人は多いものです。もし親御さん自身、アサーションがそこまで得意ではないという思いがあれば、「私も言うの苦手だったんだよね」と伝えてあげることが、安心感につながります。厳しい訓練のような練習をするのではなく、「一緒にできるようになるといいね」という温かい雰囲気で取り組んでいくことが大事です。はじめはぎこちなくても、実際に言葉を口に出して練習することが、次に活かされます。

永井先生プロフィール
永井 智先生 立正大学 教授
<経歴>
立正大学副学長・心理学部教授。公認心理師および臨床心理士の資格を有し、専門は発達臨床心理学。
特に「援助要請行動」に関する心理学的研究に注力し、「助けを求められない」子どもや若者への支援の在り方を探究している。筑波大学大学院博士課程修了後、2008年より立正大学に着任。スクールカウンセラーや精神科クリニックでの心理士としても活動経歴があり、臨床と教育の両面から心理支援の現場に関わり続けている。
著書に『中学生における友人との相談行動』など多数。
永井先生より、読者の皆さんへ
今回たくさんのご質問を拝見して、多くのご相談で担任の先生やスクールカウンセラーの方など、学校との連携ができると良いなという感想を持ちました。具体的に何か学校から対応してもらうようなことまでは必要ないという場合でも、情報共有をしながらお子さんを見守っていくことで、何かが起きた場合でも迅速な対応ができるようになります。
何らかのご事情で学校との相談が難しい場合は、その他の公的な相談機関や、支援を専門としている医療機関、民間の支援機関、大学の心理相談室などもぜひご活用ください。
私からの回答も、頂いた情報の範囲で状況をイメージしながらお伝えしているものですので、ご相談には書ききれないご事情などがある場合もあると思います。親御さんご自身も、悩みながら日々お子さんを支えておられることと思います。どうか一人で抱え込まず、周囲の支援を得ながら、少しずつお子さんと一緒に歩んでいけることを願っています。
お手紙カウンセリングのご案内
永井先生とお手紙交換をしてみませんか。
言葉にしてみることで、心の中が少し整理されたり、不安や悩みを落ち着いて見つめ直せたりするかもしれません。
お送りいただいたお手紙には、先生から丁寧なアドバイスを添えてお返しします。
ゆっくりと言葉をやり取りすることで、少し心が軽くなる―――そんな時間をお届けできたらと思います。
お手紙カウンセリング概要
■対象:
小学生のお子さまがいらっしゃる保護者さま
■料金:
2往復:4,000円
■先生からのお返事のボリューム:
1,200字程度/1回あたりのお返事
■募集人数:
2名/ひと月あたり
■ご利用の流れ
①空き枠を問い合わせる(本フォーム)
②空き状況と入金方法の案内
③本申し込み・お支払い
④お悩み記入フォームへの記入(1回目)
⑤先生からのお返事を郵送でお届け(1回目)
⑥お悩み記入フォームへの記入(2回目)
⑦先生からのお返事を郵送でお届け(2回目)





