小学生のお子さんの不登校や行きしぶりに関するお悩みに、永井智先生(立正大学副学長・心理学部教授、公認心理師および臨床心理士)が答えていく全5回の連載企画「永井智先生の“心が軽くなる”不登校・行きしぶり相談室」。
最終回となる今回は、不登校になった子のきょうだいの対応に関する相談です。
記事の最後には、永井先生によるお手紙カウンセリングのご案内もしていますのでぜひチェックしてみてくださいね。
目次
不登校になった子に、きょうだいがいた場合の影響
きょうだいのうち誰か一人が不登校になった場合、学校に通えているほうのお子さんが、不登校のお子さんに対する疑問や不満を親御さんにぶつけることがあります。
きょうだいのうちひとりが不登校に。学校に行けている子のケアは?
(小6・小1 女の子保護者)
上の子(小学6年生)が現在不登校です。下の子は今のところ学校に行っていますが、ときどき「お姉ちゃんはいつも家にいてずるい」と言われることがあり、対応に困っています。そのような場合、下の子にはどのように話をすればよいでしょうか。
このお悩みに対して、永井先生はどう答えてくれたのでしょうか。
子どもの「ずるい」にどう対応する?

不登校に限らず、お子さんからの「ずるい」は、親が対応に困る場面の一つです。子どもの「ずるい」は発達上よく出てくる言葉で、きょうだいのいる家庭ではほぼ必ず耳にするものです。それでも、とっさの対応はやはり難しいものですよね。
特に今回のような状況の場合、上のお子さんには「今は家にいてよい」と伝えながら、下のお子さんへは学校へ通うように言うことは、親自身、まるで相反するメッセージを出しているように感じ、説明に困るかもしれません。
小学校1年生は、「学校は行くものだ」という価値観をまさに身につけ始めた時期です。毎日決まった時間に登校し、勉強する生活を定着させてきたからこそ、「行かない」という状態に違和感を持つのは当然で、「ずるい」という言葉が出てくるのも自然な反応です。
こうした場面で大切にしたい対応は、大きく2つあります。
「ずるい」の奥にある子どもの本当の気持ち

1つめは、「ずるい」という言葉の奥にどんな思いがあるのかを丁寧に考え、話を聞くことです。
「ずるい」に込められている気持ちは、子どもによってさまざまです。「どうしてお姉ちゃんは学校に行っていないの?」という単純な疑問であることもあれば、実は下のお子さん自身も学校に対して何らかの負担や不安を抱えていて、「私だって行きたくない」と思っている可能性もあります。そのような場合は、下のお子さんの学校への思いをまず受け止め、必要に応じてサポートをすることが大切です。
また、学校に行くかどうかということよりも、「お姉ちゃんばかりが優遇されているように見える」という思いが背景にあることもあります。不登校になると、どうしても家族の関心や時間がそのお子さんに向きやすくなります。その結果、きょうだいが「自分はあまり見てもらえていない」と感じたりもします。つまり「ずるい」という言葉の中には、「私のことも見てほしい」という気持ちが含まれている場合もあるのです。
そのような場合、まずは下のお子さんと一対一で過ごす時間を増やすなどして、「あなたのことも大切に思っているよ」と日常の中で伝えていくことが助けになるかもしれません。
「ずるい」という言葉をすぐに正そうとする必要はありません。「そう思うんだね」のように、まずは気持ちを受け止め、落ち着いて対話をすることが重要です。そして、どういう思いからその言葉が出ているのかを考え、それに応じたかかわりを心がけていくことが、大事な一歩です。
親の「軸」をぶらさずに、子どもにわかる言葉で

もう1つの対応は、上のお子さんが学校を休んでいる事情や、親御さんの考えについて、可能な範囲でよいので子どもにわかる言葉で丁寧に伝えることです。
お姉さんが学校に行かないのは、下のお子さんから見ると、不公平に見えるかもしれません。しかしこれは、「学校は、行けるなら行ったほうがよい。でも、行くことがとてもつらくなってしまうときには、無理をしなくてよい」という一貫した考えに基づく対応です。
たとえば、「お姉ちゃんは今、心がとても疲れているから、元気をためているところなんだよ」といったように説明してみるのもよいでしょう。きょうだい間で同じ対応をすることが必ずしも公平とは限りません。それぞれの状態に合わせて支え方を変えることは、不公平ではなく「その子に合った支援」です。

日ごろから、お子さんの年齢や性格に応じて違う対応をしている場面は多くあるはずです。上のお子さんへの対応も、その延長線上にある対応です。「その子に合った支援」をしているのだと、ご自身の中の軸を確認しながら話せると、言葉にも落ち着きが出てきます。
ただし、説明は大切ですが、すぐに完全な理解を求める必要はありません。小学校低学年は、発達段階的にも他者の事情を十分に理解するのがまだ難しい時期です。「まだ難しいよね」と親の側が少し余裕を持ち、わからないのも仕方がないことを心にとめながら、繰り返し少しずつ伝えていくことで、理解はゆっくり育っていきます。
「自分は大切にされ、尊重されている」と実感できるかかわりを

最後にもう一つだけ重要な点をお伝えします。親はそれぞれの子に合わせたかかわりをしているのだということを理解してもらうには、それぞれのお子さんが「自分は大切にされ、尊重されている」という感覚を持てることが重要です。きょうだいがそれぞれ尊重され、それぞれに合った対応をしてもらっていると感じられれば、子どもはやがてその違いに納得することができるようになります。
お子さんの気持ちに耳を傾け、丁寧に説明をし、一人ひとりを大切にしたかかわりを行っていくことで、お子さんも少しずつ親の意図や思いを感じ取っていくでしょう。時間はかかるかもしれませんが、必要に応じて他の人の支えを得ながら、それぞれのお子さんに向き合っていってください。
永井先生プロフィール
永井 智先生 立正大学 教授
<経歴>
立正大学副学長・心理学部教授。公認心理師および臨床心理士の資格を有し、専門は発達臨床心理学。
特に「援助要請行動」に関する心理学的研究に注力し、「助けを求められない」子どもや若者への支援の在り方を探究している。筑波大学大学院博士課程修了後、2008年より立正大学に着任。スクールカウンセラーや精神科クリニックでの心理士としても活動経歴があり、臨床と教育の両面から心理支援の現場に関わり続けている。
著書に『中学生における友人との相談行動』など多数。
永井先生より、読者の皆さんへ
今回たくさんのご質問を拝見して、多くのご相談で担任の先生やスクールカウンセラーの方など、学校との連携ができると良いなという感想を持ちました。具体的に何か学校から対応してもらうようなことまでは必要ないという場合でも、情報共有をしながらお子さんを見守っていくことで、何かが起きた場合でも迅速な対応ができるようになります。
何らかのご事情で学校との相談が難しい場合は、その他の公的な相談機関や、支援を専門としている医療機関、民間の支援機関、大学の心理相談室などもぜひご活用ください。
私からの回答も、頂いた情報の範囲で状況をイメージしながらお伝えしているものですので、ご相談には書ききれないご事情などがある場合もあると思います。親御さんご自身も、悩みながら日々お子さんを支えておられることと思います。どうか一人で抱え込まず、周囲の支援を得ながら、少しずつお子さんと一緒に歩んでいけることを願っています。
お手紙カウンセリングのご案内<お申し込み締切:2026年3月31日(火)>
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言葉にしてみることで、心の中が少し整理されたり、不安や悩みを落ち着いて見つめ直せたりするかもしれません。
お送りいただいたお手紙には、先生から丁寧なアドバイスを添えてお返しします。
ゆっくりと言葉をやり取りすることで、少し心が軽くなる―――そんな時間をお届けできたらと思います。
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「相談するほどじゃない」気持ちを、そっと書いてみませんか。 ~ひとりで抱え込まなくていい。お手紙で気持ちを整理する時間~
お手紙カウンセリング概要
■対象:
小学生のお子さまがいらっしゃる保護者さま
■料金:
2往復:4,000円
■先生からのお返事のボリューム:
1,200字程度/1回あたりのお返事
■募集人数:
2名/ひと月あたり
■お申し込み締切:
2026年3月31日(火)
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